排熱・廃熱からの
酸化還元液体を用いた発電技術

Power Generation from Waste Thermal Energy Using Redox Liquids

研究内容

多くの場面で「捨てたい熱」が発生しています。エンジンやタービンなどの熱機関、CPUやパワー半導体などの電子素子では、熱効率を上げるため、および材料を熱損傷から守るために冷却が必要であり、例えば人類の発電量の約2%を消費するようになったデータセンターではCPU群の発生熱を速やかに排出する必要があります。一方、熱もエネルギーの一形態ですから、迅速に捨てる必要は認めつつ、これは「もったいない」と見ることもできます。この「もったいない」の根底には、「高温熱源から冷却流体への熱移動は、その熱エネルギーの電気エネルギーへの可換分(エクセルギーといいます)を損失させる行為であり、冷却が積極的なほどエクセルギーは高速に散逸される」という原理があります。冷却は世の中で幅広く行われていますが、その緊急性に隠れ、このようなエクセルギー損失への対処は従来行われてきませんでした。

この「もったいない」の解決の一般論として熱電変換があります。従来、熱電変換の研究のほぼ全ては、固体材料で行われてきました。固体の熱電素子が有意に働くためには、素子の両面間に大きな温度差がついている必要があります。つまり、その後段に「より大きな熱抵抗(例えば固体-空気の界面)」があって、素子の両面間に大きな温度差がつかない場合には、有意に働きません。ところが、「熱電素子の両面間に大きな温度差がついている」ということは、「排熱面に設置された熱電素子が、排熱源と環境との間で支配的な熱抵抗になっている」ということです。これは熱電素子の排熱面への設置が「捨てたい熱」を迅速に捨てる妨げになることを意味し、「子」である熱電素子が「親」であるエンジンやタービンの効率を下げ、冷やすべき機器の温度を上げる矛盾を生じるため、システムとしての正当化が難しくなります(この点の詳しい解説)。

しかし、もし液体で行う熱電変換が存在し、それを強制対流冷却に組み込むことができれば、このジレンマの解決が可能と考えられます。液体は熱輸送媒体の役割も担えるため、その適用(=冷却で散逸しているエクセルギーを電力として一部回収すること)と要求満足(=除きたい熱を迅速に除き、対象を冷却すること)とが両立可能になるためです。このとき、排熱面と流動液体の界面に形成される温度境界層において大きな温度差がつくことは、短距離間に大きな温度差をつくこと(熱電発電に有利)、および、排熱面における熱伝達率が向上すること(冷却に有利)、の二重の利点につながります。一方、従来、冷却と無関係な文脈において「熱電気化学発電」という液体による熱電発電が、積極冷却の義務がない「廃熱」の再利用を目的として、閉じた静的なセルについて研究されていました。

本研究室では、世界初のオリジナル技術として、熱電気化学発電を強制対流冷却に統合した「フロー熱電発電」を創出しています。(これは存在しなかった新技術なため、名前から当研究室で作りました。)すなわち「冷やしながら発電する」というコンセプトです。私達は世界に先駆けてこのコンセプトの実証と基礎特性の解明を行い(本学ニュースリリース)、さらにその性能の飛躍的な向上に成功し(本学ニュースリリース)、現在は産業界と連携して社会実装に向けた研究開発を進めています。本創出技術は、強制対流冷却に発電機能を組み込むことにより、現状未対処な「強制対流冷却に伴って生じるエクセルギー損失」への解決を与えうる新しい未利用熱の利用技術であり、社会におけるIoT圏の拡大、宇宙への人類の居住圏拡大にも組み込んでゆける、発想の根本的飛躍を伴う革新的な熱エネルギー利用技術となっています。

私たちが創出したこのような「熱エネルギー再利用発電技術」には極めて広大なフロンティアが存在しており、本テーマは伝熱工学、流体力学、電気化学、錯体化学、機械設計をクロスオーバーする融合領域となっています。本技術は黎明期にあり、大きな展開可能性をもつ挑戦的なテーマとなっています。



関連資料:冷却を行いつつ発電する「フロー熱電発電」の創出(電気評論, 2018)

関連資料:冷やしながら発電する「フロー熱電発電」の開発(応用物理, 2022)

関連資料:冷却と発電を両立したレドックス・フロー熱電発電の開発と展望(電気化学, 2024)



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